HEARTS/Double Bside

HEARTS
Double

Singalong

2016,06,25
R.E.M.
「Tongue」

1980年にマイケル・スタイプ(Vo)ピーター・バック(G)マイク・ミルズ(B、Vo)ビル・ベリー(Dr)の4人で結成された、アメリカを代表するオルタナティヴ・ロックバンドR.E.M.。
2007年にロックの殿堂入りを果たし、2011年に惜しまれつつ解散しました。

 

R.E.M.の4人はジョージア州の州都アトランタから車で1時間半のところにあるアセンズという田舎町出身で、いわゆる商業的な成功に執着をしなかったため、大都市に拠点を移すことをしませんでした。

結成当初はアセンズのライブハウスで大学生を中心に人気が出始め、全米各地のカレッジ・ラジオで頻繁に彼らの曲が放送されるなどして、その人気を広げていきました。

その結果、インディーレーベルから出したファーストアルバム「Murmur」が17万枚のセールスを記録。これは無名の新人バンドのデビューアルバムとしては異例のヒットとなりました。
さらに「Murmur」は、同じ年に発売されたマイケル・ジャクソンの『Thriller』やThe Policeの『Synchronicity』という今でも名盤と呼ばれるアルバムを抑えローリングストーン誌の年間ベストアルバムにも選ばれています。

そして当時の彼らのヘアスタイルはマッシュや、ウルフ。ファッションも花柄シャツにライダース、柄オン柄、丸メガネなど80年代に流行ったものが、ごちゃまぜになった感じですが、決して嫌味な感じはなくとてもバランスが良い感じに見えます。

 

 

 

R.E.M.は1988年にメジャーレーベルに移籍し、押しも押されぬ大物ロックバンドへと成長していきます。特にマイケルのシンガー、またパフォーマーとしてのカリスマ性が80年代以降のオルタナシーンに与えた影響は絶大で、カート・コバーン(Nirvana)や、トム・ヨーク(RADIO HEAD)、クリス・マーティン(COLD PLAY)など様々なアーティストがその影響を公言しています。

 

 

 

今回ご紹介するのは、1994年発売の9hアルバム『MONSTER』に収録されている、「Tongue」という曲です。

tongue iTunes

 

このアルバムは故カート・コバーンに捧げたと言われていてグランジロック風なのですが「Tongue」だけは異色。子守唄のようにゆったりしたテンポのバラードです。

歌詞は「自分は醜く最後に声がかかる都合のいい女だ」と呟く女性の心理を表現しており、それをマイケルが全編ファルセットで歌っています。初めて聴いた時は、「あれ??」と自分の耳を疑いましたが、優しいメロディに包まれた不思議な世界観にすぐに惹かれて何度も何度も聴きました。PVも悲しい歌詞とは対照的に曲中ずっとミラーボールが回っているという神秘的なスタジオの情景をテレビで色んな人々がそれぞれの場所で観てるというもの。女性視点で作られたこの曲を「女の子みたいに歌おうとしたんだ」とマイケルは語っています。

彼らのPVはいつもアート性が高くシャレも効いていて、その辺りも、R.E.M.が玄人ウケするバンドである理由の一つなのかもしれません。

 

 

そして、転機はいきなりやってきます。

『MONSTER』発売の翌年1995年に、R.E.Mはこのアルバムを引っさげ大規模なワールドツアーを行うのですが、「Tongue」を演奏中にドラムのビル・ベリーが倒れ病院に搬送されます。
そしてこれがきっかけとなり、1997年に健康上の理由でビルが脱退。リズムの要であるビルの脱退は、メンバーはもちろん関係者やファンを不安にさせました。まさしく、R.E.M.は岐路に立たされたのです。

しかし、マイケルは「三本足になった犬は三本足の歩き方を学ぶだけさ」というユーモア溢れるロック史に残る名言を残し、言葉通り新しいドラマーは入れずに、3人で活動を続けました。

 

R.E.M.の曲は今聴いても心に響く素晴らしい曲ばかり。しかし、売れた曲もあれば、全然売れていない曲もあります。いい曲だからといって、決して売れる訳ではありません。これは音楽だけでなく、ヘアスタイルや、ファッションも同じ事。

そして2016年の今も、特にその傾向が強いように感じますが、R.E.M.が、かつて音楽に対する真摯な姿勢を崩さなかったことに、その葛藤の答えがあるように感じます。

 

 

余談ですが。

カート・コバーンの遺体発見時に、つけっぱなしのステレオから流れていたのはR.E.M.の当時の最新アルバムだったことは有名な話ですが、カートは亡くなる直前にマイケルとコラボする約束をしていたそうです。調べていくうちに、マイケルはカートを救いたかったんだなという事がハッキリと分かりました。

その話はまた今度。