HEARTS/Double Bside

HEARTS
Double

Singalong

2021,11,09
襟裳岬

ァ~ パ パ パ パァ~ ♪ になるとは思わなかった。
 びっくりした~。
そのトランペット聴いた時倒れたもん。」
 ( ※坂崎幸之助と吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLDより)

と語るのは、作曲をしたフォークシンガーの吉田拓郎さん。
演歌歌手・森進一さんのためにつくったとはいえ
まさかこのような仕上がりになるとは想像もしていなかったそうです。




 という事で、今回は、襟裳岬を紹介したいと思います。


「演歌とフォークの融合にチャレンジした」
襟裳岬をプロデュースした、高橋隆さんのインタビューより。
(ビクター音楽産業株式会社ディレクター※現在はJVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)
1972年当時はこの斬新なスタイルが話題となり、空前の大ヒットとなりました。

演歌とフォークの融合?そもそも演歌の定義ってなんだろう…

・明治時代の自由民権運動において政府批判を歌に託した演説歌の略。
・庶民の口に出せない怨念悲傷を艶なる試曲に転じて歌うのが艶歌。
・「艶歌」や「怨歌」の字も当てられていたが、ビクターによる
 プロモーションなどをきっかけに「演歌」が定着した。
・「小節(こぶし)」と呼ばれる独特の歌唱法が多用される。
海・北国・北国の漁船・酒・涙・女・雨・歓楽街・雪・別れ
がよく取り上げられる。
(wikipedia、チコちゃんに叱られるより)
との事で、個人の勝手なイメージですが、演歌は寒い地域の哀しい物語が浮かんできます。

しかし襟裳岬という曲は、演歌調なのにあまり寒さや哀しさを感じず、
むしろ少し暖かい気持ちになるのは、フォークソングがベースにあるからなのかもしれません。
吉田拓郎さんが歌うと「フォーク」、森進一さんが歌うと「演歌」となる不思議。
全然違うのですが、どちらも素敵なのでぜひ聴いてみていただきたいです。


「襟裳の春は何もない春です。」

当時は「何もない春」なんて無いと反感を持たれ、襟裳町民から抗議の電話もあったそうですが、
曲が大ヒットし、襟裳の知名度アップに貢献したということで反感も消え、
後にえりも町から感謝状が贈られたのだとか。

この曲の詞を担当したのが作詞家の岡本おさみさん。
作曲者としての吉田拓郎さんとのコンビで知られ、
襟裳岬も、この二人によって作られました。

元々は、『ビートルズが教えてくれた』という岡本おさみさんの詩集があり、
その中の「焚火という詩をベースに吉田拓郎さんが曲をつけ完成しました。

"拓郎から電話があって、曲がついたけど、いくつか言葉を考えたいと言ってきた。
曲との関係で「二杯目だね」が「二杯目だよね」。「角砂糖ひとつ」が「ひとつだったね」、
「煩わしさを」が「煩わしさだけを」にその場で改めた。その方がメロディに溶けこんだ。
「思い出して恥ずかしいね」が、何だかメロディをつけてみるとひっかかるんだが、
と彼が言うので、過去の傷(恥ずかしいね)を、思い出(懐かしいね)に、
するような後ろめたさがあったけれど、この部分も「懐かしいね」、と改めた。” 

「唄うのが森さんということで、タイトルがちょっと変だなぁ、弱いなぁというのがあって、
その時に、いくつか旅してきた日本の風景を思い出しながら、ふっと浮かんだのが襟裳岬。
それがまあ何もないということと関連しているんですけどね。
その時の気分があの、襟裳の風景に立った時にね、全部包み込まれるような、
なんか不思議、非常に馴染んだ風景だったんですよ。」(NHK そして歌は誕生した)

と、初めて行った襟裳岬の印象を語っている。



「日々の暮らしはいやでも やってくるけど 静かに笑ってしまおう」
ちょうどこの時、
森進一さんと吉田拓郎さんはスキャンダルに巻き込まれ、
苦境に立たされていたそうです。
岡本おさみさんが思いを込めて書き換えた最後の3行に感動し、歌う森進一さんも

「歌手としてではなく一人の人間として歌いたい。初めてそんな曲に出会った。」
と語っています。

そしてスタッフの反対を押し切り、B面だった襟裳岬を両A面に変更して発売しました。

こうして完成した襟裳岬は大ヒットを記録します。
森進一さんは本作で日本レコード大賞、日本歌謡大賞など多くの音楽賞を獲得しました。


そして今も歌い継がれていることが、名曲である所以。
The Yellow Monkeyの吉井和哉さんや、(僕はこの曲で、襟裳岬を知りました。)
現代のブルースバンド、T字路sもカバーしています。


どんな雰囲気なのか気になっていたので、ずっと行ってみたかった襟裳岬。
つい先日、ようやく行くことができました。
岡本おさみさんが言っていた、包み込まれるような不思議な感じ。
確かに何もないけど、さびれた雰囲気でもない。
北海道の大自然を感じられるとても素敵な場所でした。
(運がよければアザラシも見れるそうですよ)

Double SONS 松井 正太