HEARTS/Double Bside

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Double

「晴れのち」

2016,08,17
オーダーメイドで作る下駄
丸屋履物店

着物や浴衣が大好きで草履や下駄も持っているのですが、持っているものは全て既製品ばかり。
ほぼオーダーメイドで下駄が作れるという話をきいて、足を運んで来ました。

 

東海道五十三次の第一宿であった品川宿に、「丸屋履物店」はあります。慶応元年創業に創業して、今年なんと151年目を迎える老舗中の老舗の「丸屋履物店」は創業当時の面影を残すお店の佇まい。この東京の真ん中とは思えないような雰囲気です。

 

まずは沢山の台の中から自分好みの一つを選び、さらに鼻緒を選びます。
組み合わせは無限大にあり、どの台にどの鼻緒を選ぶかで下駄の雰囲気は大きく変わってしまいます。

今回、私は初めてという事で台の中でも一番のベーシックと言われる「芳町の黒捌き」を選びました。
芳町とは、女性用2本歯の下駄の基本形です。

昔、2本歯の下駄でも女性用はやや背が低く作られていました。そして背が低いということは下駄の寿命が短いということにもつながります。これを嫌った芳町の芸者、つまりは吉原の芸者たちが「もう少し背を高くしてほしい」という要望を出したことでこの高さになったそうです。
そのことからこの形は芳町と呼ばれるようになりました。

鼻緒は丸屋さんの、オリジナル「桃・紺水引麻花緒」。優しい色味がとても素敵です。

決めるとすぐにその場ですげて、足や履き方に合わせて6代目店主が調節してくれます。

 

「履いてみて~」と、さらりと言われ履いてみると...
あまりの履き心地のよさにびっくり!
鼻緒の当たりはきつすぎず、ゆるすぎず。
その絶妙な手仕事に感激します。
そして6代目店主の手さばきはとても美しく、鼻緒をすげる時など見ていてうっとりするほどでした。

と、同時に、履き方、歩き方も教えていただきました。想像していたよりも、かかとは台から出た状態、つまり、重心はかかとではなくつま先にかけて歩きます。そのため、歩き方が上手だと2枚歯の下駄の場合、前の歯だけがすり減っていくそうです。

「昔、ここら辺は一番の賑やかな場所。映画館がこの並びに3軒はあった。下駄屋も、何軒もこの通りに並んでいたんだから」と、6代目は語ります。
いまでは、丸屋さんただ一軒となってしまいましたが、昔の面影が残る細い小道を抜けて、旧東海道沿いにふと現れる気持ちの良い履物屋さんです。

6代目、7代目のお二人が今日も並んで、鼻緒をすげたり、下駄を作り続ける。
街や時代が変わっても、変わらない人と文化がそこにはありました。

 

 

日本の夏の装いに、またひとつこだわりを添えて、街に出かけたいとおもいます。

 

 written by HEARTS / 松山絵美