HEARTS/Double Bside

HEARTS
Double

「晴れのち」

2018,01,17
寒くて暖かい真冬の釧路 ー前編ー

あれは二年ほど前の秋、東京生まれ東京育ちの友人がいきなり北海道に住みたいと仕事を辞めて北海道東部の釧路市に引っ越して行きました。あまりに突然のことで友人一同唖然としてしまいましたが、現地でついた職業はなんと釧路川のレンジャー??

レンジャーって何?と困惑しましたが友人のInstagramから発信されてくる写真は目を奪うほどのものばかりでした。これが日本?ドラクエのダンジョンかなと思ってしまうほどの壮大なスケールの景色。どこまでも蛇行しながら続く釧路川。しかも気温は-15℃。

友人はこの景色に魅了されてここに来たのでしょう。

それから二年ほど経過したある日友人から釧路に遊びに来ないか?と誘いがありました。

僕はあの写真を思い出し、あの景色をこの目で見てみたくてたまらなくなりました。

二つ返事で釧路に行くことを決めた僕は10日後にたまたま取ってあった三連休に飛行機のチケットを取りました。

夏に人気の観光地の北海道。繁忙期に航空券を買うと往復で10万円超えなんてのもありますが、真冬の釧路直行便はなんと往復で¥13000。激安です。僕の実家の福島に帰る新幹線のチケットよりも安い。

北海道に出発する前日、荷造りをしながら不安が募ります。東京の寒さに合わせた防寒具しか持ち合わせていない僕が釧路で凍り付いてしまうのではないかと。友人からは大丈夫と言われましたが、平均気温は-10℃以下、大丈夫なはずがありません。僕はこの日のために購入した最上級のヒーットテックこと、極暖を何枚も身につけインナーダウンを着て、分厚いフリースを着て最後にダウンを羽織る6〜7枚重の作戦で行くことにしました。靴は分厚い靴下二枚重ねの雪山用のトレッキングブーツ。今の僕にできる最上級の暖かい装備です。

始発便に合わせて朝4:00にいざ出発!

飛行機に搭乗した僕が気になったのはみんな以外と薄着で東京とあまり変わらない。中にはコンバースの人も...そんな布の薄っぺらい靴じゃ足元から凍ってしまうんじゃないかと心配になります。

なんて考えているうちにあっという間に釧路の上空まで飛んで来ていました!パルプ工場のよううなものが見えます。これが日本の東の果てか〜なんて浸ってる暇もなく所要時間1時間30分ほどで到着。意外と近いんですね!笑

迎えに来た友達はジーパンにパーカーとかなり薄着。靴も普通のスニーカー。周りを見渡してもエスキモーみたいに厚着してるのは僕だけでした。聞けば道東の人たちは外にいる時間が少ないとのこと。家の中、車の中、建物の中にいて移動の時の一瞬外に出るだけなのでみんなこんな感じなのだそう。よくよく考えたら僕も田舎にいた時はほとんど車移動だったなと思い出しました。普段は真冬でも東京の街を歩き回っているからそんな気でやって来た自分が何だか浮いてて少し恥ずかしい...

その足ですぐに向かった先はあの釧路湿原でした。

 

ここの上流の最深部は国と村の許可がないと行けない秘境。国内から絶滅したと思われていたタンチョウが1924年に再発見された場所なのだとか。

ここから3時間以内に20km下流までカヌーで下りゴール地点側の駅から電車でここまで戻って来て車をとってからまたゴール地点に戻りカヌーを回収して温泉に浸かって帰ろうというのが友人のプランでした。初めてのカヌーは操作が難しかったですががむしゃらにオールを嗅ぎました。半分ぐらい来た辺りで疲れて川の流れに身を任せると、シーンと静まり返った白銀の世界にハッとしました。時折姿を見せる鹿、タンチョウ、オオワシ、フクロウなどの動物たちも少し警戒した様子でこちらの様子を伺っています。川べりに見たこともないような形の幾重にも釣り下がった氷柱が川の流れに共鳴して何とも美しい音色が聞こえて来ます。日本にこんなところがあるなんてとうっとりしていたその時です、なんと友人の乗っていたカヌーがバランスを崩しくるっと横に回転して水の中に逆さまに沈んでいきました...気温は−10℃以下、慌てて水の中から起き上がって来た友人は悲鳴をあげながら信じられない力でカヌーを引き上げ浅瀬に上がって来ました。ウェットスーツを着ていたおかげで体への浸水は防げましたが防寒着は水浸しです。たちまち髪の毛が凍りついてきて一刻を争う事態になってしまいました。

それからは遅れを取り戻すため無言でオールを漕ぎ続けました。が、あと少しでゴールというところでガタンゴトンと音が聞こえて来ました。電車は無残にも川横の線路を走り去って行ってしまったのです。最悪です。

たどり着いた駅舎の中で次の電車を待とうとしましたがすっかり日も暮れかけてきて暖をとるものもありません。ポットにある熱湯をブーツの中に注いでも数分で凍りついてしまうほどの寒さとの戦い。次の電車は1時間20分後...このままでは友人は凍死してしまうと思い駄目元でタクシー会社に電話したら幸運にも5分ほどで配車できるところにタクシーがいるとのことでした。タクシーが到着した時の安堵感。助かった〜!!

無論、大幅に予定が遅れた我々一行は温泉に入ることは出来ませんでしたが地元の居酒屋さんで旬の白子をたらふく食べることが出来ました〜

長くて辛かった初日は暖かい布団でぐっすり眠りにつきました。

明日へつづく。

written by 坂 政尚