Kula Shaker

Kula Shaker

「Hey Dude」ーKula Shaker 

 

今回ご紹介するのは、90年代後半、イギリスに彗星のごとく登場し、忽然と消え去ったバンド、Kula Shaker (クーラ・シェイカー)の「Hey Dude」です。(現在は再結成し活躍中)

 

1995年にデビューし、本国イギリスではこのデビュー作がいきなりチャートの1位を飾るなど華々しいデビューを飾り、日本でもクリスピアン・ミルズ(Vo&Gr)の甘いルックスも加わり、かなりの人気をあつめました。(ちなみにクリスピアン・ミルズの父は映画監督ロイ・ボールティング、母はディズニー映画の名子役ヘイリー・ミルズ。)

 

 “ロックが待ち焦がれたバンドの誕生!!”“ロックの救世主!!”

 などと、当時のメディアの持ち上げっぷりもすごく、デビューアルバム『K』はオアシス以来のデビューアルバム最速売り上げを記録し、全英でプラチナム・セールスを達成。加えて全米と日本でもそれぞれ25万枚を売り上げるなどの大きな成功を収め、瞬く間にして大躍進を遂げました

 ちなみにこの曲、「Hey Dude」はヘイ・デュードで、ジュードではありません。

デュードです。

言うまでもなくビートルズのあの曲にひっかけてあるのでしょうが、かなり高速なギターから始まり耳にした瞬間、頭の中のドーパミンとアドレナリンが一気に吹き出す。

大げさに言うとこんなかんじでしょうか。

 

この曲が収録されている1stアルバムの『K』は、1996年に発売しました。サイケデリック、ロック、R&B、インドに代表される民族音楽などの様々な音が混在する傑作アルバムです。オアシスがビートルズの最もポップな部分を受け継いだとするなら、クーラ・シェイカーはビートルズのインド音楽とサイケを最も色濃く受け継いでいると言われています。

うねるベースと激しいドラム、ワウを使ったギターが絡み、ミルズ(Vo)の寝起きのような力の抜けた歌い方。

かといって、とても聴きやすいメロディー。今聴いても新鮮さがあります。

 

当時96年のイギリスと言えば、ロンドンやマンチェスターを中心に発生したオアシスやブラー、レディオヘッドなどのブリットポップと呼ばれる王道バンドが数多くデビューし、もちろん日本でもかなり流行っていました。そんな中、先述したように、彼らが発売したこのアルバムは全英1位となります。民族的なサウンドが異色というか、目立ったのか、それとも飽和状態となったブリットポップに飽き飽きして、新しいものを求めていた証拠だったのか。そして、彼らに続くような新たなムーブメントは起きなかった。

なぜか。

それは、当時MTVの登場にみられる、いわゆるヒットチャートを追いかける音楽製作が多かった中、彼らは全英1位を獲るほどにヒットしたにもかかわらず、彼らを追いかけるようなサウンドを持ったバンドは出てこなかったのです。それは彼らの音楽が唯一無二だったからこそで、この時代だったからこそ良さが引き立ったのでしょう。そういったバックグラウンドを持って、Oasis、Blur、Pulp、Suedeといったブリットポップの有名な曲と比べてこの曲を聴くことは、面白いかも知れません。

 

そして、彼らの登場以降ブリットポップは社会現象と化し、ミュージシャンがモデルになったファッション誌が発売され、イギリスの国旗をあしらったりと、ファッション業界にも影響を与えました。それを象徴するかのように1996年、ユアン・マクレガー主演の映画「トレインスポッティング」は公開されたのち、ロングヒットを記録。劇中で使われている楽曲にブリットポップが多数使用されており、当時いかに影響力があったのかわかります。

 

その一方で日本ではというと、ニルバーナの影響でグランジファッションと呼ばれるネルシャツにコンバースなどのファッションや、「APE」や「UNDERCOVER」などを代表する「裏原系」と呼ばれるファッションが流行り、男子は「ロン毛」、女子は「シャギー」「ワッフルパーマ」などの髪型が大流行します。シャネラー、アムラーなど、○○ラーという言葉が流行ったのもこの時期ですね。そして校則違反のファッションとして問題になった「腰パン」も大きな社会現象になったのもこの時代です。

今、思い返すと色んなジャンルのファッションが混在していたんですね。

 90年代当時のファッションが、またリバイバルされそうな今、その当時の音楽も一緒に聴いてみて下さい。

 

 

 
江良友規子