
TRAVIS
TRAVIS 「Turn」
1995年にスコットランド、グラスゴーにて結成されたブリットポップを代表するバンドTRAVIS
1996年にデビューアルバム「Good Feeling」をリリースし、OASISの再来として注目されます。デビュー当時は、曲調が似ていたり、OASISのノエルギャラガーがTRAVISのファンだと公言するなどして注目され、実際にもOASISの全英ツアーの前座に抜擢されました。
お互いがファンだと認め合ったTRAVISとOASIS。
TRAVISというバンドを語るには、まずOASISとの関係性を語らずにはいられません。
特に特筆すべきは、TRAVISの「Writing to Reach You」とOASISの『Wonderwall』のイントロ部分です。
このふたつの曲のイントロ。ものすごく似ています。ファンの間ではTRAVISがパクったのでは?という憶測が流れますが事実、のちのインタビューにおいて、TRAVISがOASISの公認をもらって似せて作ったと答えています。
そして、彼らが結成を果たした1995年といえばBlur OASIS等によって作られたブリットボップブームの全盛時代でしたが、1997年にblurのデーモンアルバーンが「ブリットポップは死んだ」と発言したりするなどして、ブリットポップのブームは、その終焉を迎えるようになります。
そんな1999年にリリースされたTRAVISのセカンドアルバム「THE MAN WHO」。90年代当時、彼らが目ざしたOASIS、blur等のブリットポップといえば少し荒々しい曲調のものが中心でしたが、このアルバムで彼らは、それまでのブリットポップにはない爽やかで美しいサウンドを確立します。
このサウンドに影響されたバンドとしては、今やビッグバンドになったcoldplayが挙げられますが、それも納得です。
「THE MAN WHO」は収録されている「Writing to Reach You」「WHY DOES IT ALWAYS RAIN ON ME?」「turn」といったシングルカット曲が全てが連続ヒットしたりと、ブリットポップの終焉とは裏腹に全英チャートで1位を記録し、TRAVISがトップバンドへの仲間入りを果たすきっかけとなったアルバムです。
今回は、そんなセカンドアルバム「THE MAN WHO」より「Turn」という曲を紹介したいと思います
サビのフレーズにある
If we turn, turn, turn, turn, turn
turn, turn, turn, turn, turn
If we turn, turn, turn, turn, turn
Then we might learn
という一節がありますが、このTurnの中には もがく、苦しむ、回り道をする
といった意味が込められています。
僕らが もがいて もがいて 苦しめば
掴めるものがあるんだろう
行ったり来たりのまわり道でこそ
僕らは何かを学ぶんだろう
耳に残りやすいシンプルな曲調でありながらも強いメッセージ性を持ち、それまでのTRAVISにしては少し珍しい曲。
信念を持ってとにかくやり続ける。
遠回りしても自分を疑うことなく一歩一歩前に進む。
この曲が歌っている歌詞にはそんな意味が込められているようですが、まさにフロントマンであるフラン・ヒーリィの行動そのものを歌っているかのようです。実際にフランはデビュー当時、観客を楽しませる為にLIVEでキャンディーを配り歩いたり、大量の花火に火をつけて火事になりそうになったりと、曲を奏でる以外にもオーディエンスのために思いつくことは色々したそうです。
無駄だと思えることでも本気で考え、本気で行動した彼らだからこそ書ける歌詞なのかもしれません。事実、そんな意味を持つこの歌詞が、どれだけ僕を励ましてくれたことか。また、LIVEにおいてもシンプルな歌詞だからこそ起きるシンガロングは、歌詞の意味も知っていると…さらに鳥肌ものです。
さらに、そんな名曲Turnが収録されているアルバム「THE MAN WHO」についての余談をもうひとつ。
今でこそ売上400万枚を記録するヒット作となりましたが、リリース当初はあまりいい売れ行きではありませんでした。しかし、あるLIVEでの出来事がこのアルバムの運命を大きく変えることに。
「THE MAN WHO」のなかに「WHY DOES IT ALWAYS RAIN ON ME?」という曲が収録されているのですが、この曲はファンの間では雨歌と言われています。
それはなぜか。
*Why does it always rain on me?=(直訳するとなぜ僕のいるところは雨なんだ?)
1999年6月26日イギリス最大のロックフェス「グラストンベリーフェスティバル」に出演した時のこと。それまでずっと晴れていた空が「WHY DOES IT ALWAYS RAIN ON ME?」をフランが歌い出した瞬間に雨に変わったそうです。
曲の名前に絡んだそのエピソードは、瞬く間にメディアに流れ、ラジオ局には大量にリクエストが寄せられることに。
そのおかげもあって、リリース当初は全英チャート19位だった本作は、その後3ヶ月をかけて初の全英チャート1位を獲得することになります。
そこから「この曲をLIVEで演奏すると雨が降る」というファンの間では噂が流れ始めたのですが、そんなファンの間での噂を知ってか日本でも‘08年に出演したフジロックにおいて、雨が降り始めた瞬間にそれまで歌っていた曲を演奏の途中でやめ、この曲に切り替えるという粋な演出をしてます。
『バンドよりも作品の方が大切。残っていくのはバンドでなく楽曲だけでいい』
そんな彼らの言葉に体現されるほどに、彼らは今までのロックバンドでは珍しく礼儀正しく粗暴な言動もない。そんな尊大な態度をとらないバンドとして人望も厚く、あのポールマッカートニーをはじめとした多くのアーティストと交流を持ち2000年以降にくるロックリバイバルブームのお手本にされるほど。
TRAVISというバンドは、ぶれない本物志向や、良い音は人を幸せにするという言葉を具現化しているかのようなバンドなのです。
かっこいいな。。TRAVIS....
良い音は人を幸せにする 。
そんな思いが伝わりました。
明日からまた、遠回りを楽しみつつ、前に進みたいと思います。
Double 中原章義