Nirvana

Nirvana

 

今回、紹介する一曲は、1991年にNirvanaによって発表された名アルバム
『 NEVER MIND』に収録されている「Smells Like Teen Spirit 」です。

 

1987年結成のロックバンド、Nirvana ニルヴァーナ

彼らの音楽は「グランジ」と呼ばれ、後の音楽シーンはもちろんのこと、
ファッション界にも多大な影響を与えました。

*ちなみにグランジとは、grungy 「汚い」という形容詞が名詞化されたもので、
彼らの出現によって世界中に広りました

 

「グランジ」という言葉は、時にその言葉の持つ外側のイメージばかりが強調されていますが、彼らにとっては、MTV等を代表するショウアップされた商業路線の音楽に対してのアンチテーゼなムーブメントであり、またファッションにおいては、いわゆるドレスアップではなく、Punk ファッションにも通じるドレスダウンするという反骨精神の表れでした。

私が最初にこの曲を聴いたのは、ミュージックビデオを、ただまとめて流すだけの深夜の番組で、見た瞬間に映像と音楽が共に頭の中にドカンと入ってきました。
薄暗くて埃っぽい、悪く言えば汚くて閉塞的な空間で髪の長い男たちが踊っている映像に割りと静かでシンプルなギターのイントロが鳴り、そこからいきなり力強いドラムとラウドなギターが、かき鳴らされる!
静か→うるさい→静か→もっとうるさい(笑)
こんな曲調とそのなんとも言えないダークで気だるい世界観。
根暗な私のココロは激しく揺さぶられました。

 

かっこいい、、、。

 

当時思春期真っ只中だった私は、いとも簡単に影響されて、
モヘアのカーディガン、ネルシャツ、コンバースのジャックパーセル、破れたリーバイス etc
真似できるものはとりあえず真似しました。
現在の30代、40代の男子は皆、似たような経験しているのではないでしょうか?そしてそして、彼らに憧れて髪を伸ばし、挫折した男子も多かったはず(笑。

{余談ですが、当時グランジがどれくらい世の中に影響を与えたかというと、90年代初頭と言えばヒップホップが音楽業界の勢力図を塗り替えようとしていた時代でしたが、ラッパーのジェイ・Zは、インタヴューを受けた際、当時を振り返りながら「ニルヴァーナそのものやグランジのムーヴメントに関してはヘンな感じだった。ヒップホップが大きな勢力になろうとしていたときにグランジはいきなりやって来て、それを一時止めたんだ」「カート・コベインがあんなメッセージを持って出てきたときは、『俺たちはちょっと(ブームが過ぎるのを)待ってなきゃいけないな』と思ったよ」と言っています。}

 

ハイトーンの髪が、無造作に動く、その束感。

多くの日本人男子が、この外国人風の柔らかく自然な束感に憧れ、それを日本人の直毛で再現すべく開発されたファイバーワックスが、日本で流行し始めたのもこの頃からでした。

 

最後に、この曲を書いたカートコバーンは「この曲の歌詞に意味なんてない。」と語っていましたが、

Hello hello hello how low

というフレーズからは、
Hello,How are you ?ではなく、「どうだい?どのくらい悪い?」という当時のストリートの若者の荒んだ日常を表現しつつも、彼なりに蔑んでいた言葉だったのかもしれません。

そしてその一方で、そのタイトルからもとれるように、日本人の90年代青春男子は、誰もがこの曲のタイトルを「10代の魂の匂い」と直訳し、「俺たちの曲だ!」と思いを馳せ、当時の30代、40代は自分の思春期をノスタルジックに思ったりしたものですが、しかし実際はというと当時アメリカで「teen spirit 」という名前の制汗剤が大流行しており、実はその商品の匂いの事だったとか、そうじゃないとか、、、、。


これも彼らなりのジョークだったのかも知れませんね。

 
高田昌宏