Bjork
アイスランドを代表する歌姫「Bjork」
ここ最近では2015年3月23日にニューアルバム「Vulnicura」を発表し、過去には8枚のスタジオアルバムを発表しています。
Bjorkはバンド「シュガーキューブス」のメインボーカルとして活動したのちソロデビュー。過去、グラミー賞においては12回、アカデミー賞に1 回ノミネートされ、2000年のミュージカル映画「ダンサーインザダーク」では主演を務めています。
この映画、日本では「暗くて観たくない映画」「鬱映画No1」と、散々な評価ではありましたが、世界の数々の賞にノミネートされ、カンヌ国際映画祭ではパルムドール、最優秀女優賞を受賞しています。もちろん劇中での音楽も担当し、アルバム「セルマソングス~ミュージック・フロム・ダンサー・イン・ザ・ダーク」をリリース。後にこのアルバムもグラミー賞とアカデミー賞にノミネートされますが、会場では、その作品よりも白鳥ドレスを着てレッドカーペットに現れたBjork自身に注目が集まり、大きな話題をよびました。
今回は、そんな彼女の2011年に発売されたBiophilliaより「Moon」をご紹介します。
まず真っ先に、Bjorkという名前を聞いたときに、「変な人」というイメージを連想する方は、多いかもしれません。
奇抜なPV。
突飛な服を着て、見た事の無いようなヘアメイクに身を飾り、それが可愛いのか可愛くないのか、、時には見てるこちらが判断に困るほど。
何年かに一回は、暴行事件をおこすトラブルメーカー。そんな印象の人も多いかもしれません。
しかし、実はとても日本と縁のあるアーティストでもあるのです。ビョークは若い頃に、その東洋的な顔立ちから日本人に似ていると周囲に指摘されたり、その影響かはわかりませんが、三島由紀夫などの日本文学をこよなく愛し、日本に強い興味を抱いていました。その影響か日本文化にとても詳しく、日本人アーティストとコラボする事もたびたび。
アートディレクター石岡瑛子氏にミュージックビデオの監督を依頼したり、コムデギャルソンの服を好んで着ることも有名。また、写真家荒木経惟氏のファンであり、彼が撮った写真を「テレグラム」のアルバムのジャケットに使用。アコーディオン奏者のcobaとのライブやアルバムでのセッション。「拘束のドローイング9」という映画では日本が舞台になっており、Bjorkらのヘアメイクを柘植伊佐夫氏という日本人ヘアメイクが担当しています。
(ちなみに、柘植伊佐夫氏は日本を代表するビューティーディレクターで、ヴィダルサスーンの技術を習得し「ELLE」などのファッション誌のヘアメイク、「おくりびと」や「13人の刺客」などの数々の映画のヘアメイクも担当されています。また、「第一回日本ヘアデザイナー大賞」(Japan Hairdressing Award)も受賞しています。)
この映画「拘束のドローイング9」では、Bjorkの元パートナーでもあり、アート界のカリスマでもあるマシューバーニーが監督。かなりシュールな内容ですが、和装婚礼の衣装に、日本髪を結ったり、その映像の切り口や、幻想な世界観は圧巻なものがあるので、アートな映画が好きな方にはオススメの一本です。
そして、ライブやPVの衣装やヘッドピースなども日本人アーティストの物を好んで起用しています。2013年フジロックに登場した際の衣装も、日本のバルーンアーティストのDaisy Balloon に依頼し、風船で出来た『DNAドレス』と名付けられた衣装はとても話題になりました。ニューアルバムの「Vulnicura」のジャケットにも、日本人アーティストの武田麻衣子氏のヘッドピースを着用しています。
武田麻衣子氏はイギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートにて帽子デザインを学び、同大学の卒業製作において、プラスチックのOHPシートを用いたヘッドピースのコレクション「Atmospheric Reentry(大気圏再突入)」を発表。幻想的でインパクトのあるコレクションは、あっという間にヨーロッパ中で注目され、Bjorkも武田麻衣子氏に注目したひとりでした。その後、2013年に行われたライブのステージ衣装として、武田麻衣子氏の作品を着用しています。
その2013 年のフジロックに来日した際に行われた、日本未来科学館での単独ライブ「Biophilia Tokyo」。
実は私、行ってきました。
チケットは2万2000円と、かなり高額な設定でしたが、即完売。Bjork自身の願いで、観客に親密感を体験してもらうため、ステージから観客席の距離は6メートル以下と設定され、キャパも800人という小さな会場。かなりのプレミアムライブということで、ネット上では争奪戦が繰り広げられ、最終的にオークションでは10 万円になったとか、なっていないとか。ファンの中では大変な騒ぎになっていました。
ライブのスケールはというと、それはそれは、もう、言葉にすることが難しく、まるで映画かなにかのセットの様な巨大な楽器に加え、今までにない音を作り出すために産み出されたオリジナルの楽器の数々。普通のライブでは見れない様な、不思議な楽器がたくさんありました。
大きな振り子のような楽器は、高さ3メートルにもなる振り子の形をしたもので、振り子が揺れるたびに弦が引かれて音が出る「グラビティハープ」。そして、稲妻を発生させる「シンギング・テスラコイル」という装置もすごかったです。超高圧の変圧器に1.5メートルもの稲妻が現れて、そこから発生する音が音階を奏でるというもの。ビリビリという強烈な音と、ライブ中にピカッと光る稲妻が強烈な印象でした。
稲妻発生装置や重力ハープとか、なんだかすごいことになっていましたが、この「Biophilia Tour」のコンセプトが「最先端のテクノロジーと音楽、自然科学を融合させるマルチメディアプロジェクト」という、とっても難しく壮大なもの。よって日本公演も、通常のコンサート会場ではなく日本科学未来館で行われました。まさにライブというよりは、映画のような、映像を観ているようなライブアート感。自分の目の前1メートル位の距離で歌うBjork。天井いっぱいに広がる空の映像や、宇宙や生命を思わせる映像、ビリビリっという謎の楽器の電子音、ビョークを取り囲んでいるバックコーラスの歌声。その時のヘアスタイルについてBjorkは「火山の噴火をイメージした」と後述していましたが、私にはビョークの歌声そのものが、まるで火山が噴火したようなパワーに感じました。
人口も少ない国なのに、sigur rossやBjorkといった有名なアーティスト多く排出するアイスランド。少し調べてみた所、アイスランドは国全体の人口が約30万人。日本でいうと東京の新宿区と同じ位の人口しかいません。それなのに音楽学校が90校、オーケストラは400以上もあるそうです。他の国に比べ、音楽の才能が優れた人が多いはずですね。
一時期はポリープの手術のため休業中でしたが、完全復活をしたBjork。今年のフジロック出演が噂されたものの実現はしませんでしたが、またパワフルな姿を見に行きたいですね。