Fairground Attraction
Fairground Attraction 「 Perfect 」
「 Fairground Attraction ??? 知らないなぁ 」。バンド名を聞いただけでは、ほとんどの人がこんな反応。
例にもれず、うちの音楽好きなスタッフに聞いても同じ答えでした。
でも、今回紹介する曲を聴かせると「 あ、これ!知ってる! 」となる事が大半。
「誰しも一度は耳にしたことがあるにもかかわらず、認知度はかなり低い」と、非常に残念でもあり実は多くの根強いファンを持つバンド Fairground Attraction のデビュー曲「 Perfect 」を今回は紹介したいと思います。
iTunes Fairground Attraction 「Perfect」
この曲が収録されているアルバム「 The First of a Million Kisses 」のジャケットも印象的で、もしかしたらそれで記憶に残っている方も多いかも。
このジャケットは、車のサイドミラーに写ったカップルのキスシーンを撮った「カリフォルニア・キス」という有名な作品で、マグナム・フォト所属の写真家、エリオット・アーウィットによる1955年発表のモノクロの作品です。
ニューロマンティックやテクノロック、ヒップホップが世に溢れていた1988年、私はポッパーズMTVでこの曲を初めて耳にしました。このバンドが奏でるアコースティックな音色に当時の私は新鮮な衝撃を受け、次の日にはCDを買いに走ったのを覚えています。
グラスゴー出身でボーカルのエディ・リーダーは、ストリート・ミュージシャンとして活動後、ユーリズミックスのバックを務めるなど70年代から活躍していた実力派。そんな彼女が、旧友であり、のちにバンドのギタリストになるマーク・E・ネヴィンに「なにか私に歌える曲をつくって」と依頼したところから、Fairground Attractionの活動は始まります。
デビューすることが目的ではなく、純粋に自分達が楽しむためにストリートでバスキング的(大道芸的)な活動をしていたところをスカウトされ、それがアルバムを作るきっかけになるのですが、デビューする頃には既にそれなりの経験と実力があった彼ら。
エディ・リーダーが着こなすイギリス流の独特なカントリーファッションも、彼らの音楽性にハマっていて私は好きでした。
彼らがデビューした1980年後半はある意味ロック界の転換点でもありました。トレイシー・チャップマン、ホットハウス・フラワーズ、エンヤ、カウボーイ・ジャンキース、ハッピー・マンデーズ・・・などなど、それまでのデジタルな音とは明らかに違うアコースティックやソウル系の音楽が頭角を表してきたのも、ちょうどこのあたりの時代。
そんな彼らの音楽を純粋に楽しむ姿勢と、世の中が求めていたものがうまくマッチしたのか、デビュー曲でいきなり全英1位を獲得。この大ヒットにより、当然ながら大きな会場でのライヴを余儀なく求められます。
デビューから1年半。戸惑いながらも活動を続けていた彼らは、元よりバンドの楽しみであったストリートでのバスキングができなくなったことに嫌気がさしてしまったのでしょうか。唯一のアルバム「 The First of a Million Kisses 」を残してなんともあっさりと解散してしまいました。デビューで全英1位を取って1年半で解散なんて、今の音楽業界では絶対に考えられない事でしょうね。それほど、彼らには売れる事よりも曲を作って楽しむことが大事だったのかもしれません。
今回紹介した「 Perfect 」だけでなく Fairground Attraction の「 The First of a Million Kisses 」は、彼らの「素直に、音楽を楽しむことの喜び」が伝わってくる素晴らしいアルバム。
クラリネットやギタロン(メキシカン・アコースティック・ギター)の音色が素朴で、爽やかで、お洒落で聴いていてホントに楽しくなる。いいものは何年たっても色褪せず、いつまでも聴き続けていけると思います。
ぜひじっくりと、そして長く聴いて欲しい、オススメの1枚です。