
B・B KING
B.B KING「Everyday I Have The Blues」
今回紹介させて頂く曲はB.B KINGの「Everyday I Have The Blues」です。
まずは、この曲を語る前に。
ブルースというジャンルがどういった音楽なのかを軽く書きたいと思います。
19世紀半ば、アフリカから連れてこられた黒人奴隷は、貧しく険しい生活を強いられていました。そういった日常の生活での苦悩や不満から生まれた黒人霊歌や労働歌から発展し、19世紀後半に生まれたのがブルースでした。
本来ブルースにはスタンダード曲や古い曲(誰がオリジナルかわからないもの)をカバーする事も多く、今回ご紹介させて頂くこのEveryday I Have The Bluesも実はカバー曲((原曲はMemphis Slim)と言われています。
さらには、このあとに生まれてくるジャンル、ジャズやロックの基本ともなっています。
と、言われてもピンと来ない方も結構多いと思いますので。笑
わかりやすく、日本のものに置き換えてみましょう。
例えるなら、俳句や川柳のような定型詩のようなものがブルースであり、現代の歌人である俵万智さんの「サラダ記念日」のような自由度の高い詩がジャズといったように例えられます。
松尾芭蕉
「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」
俵万智
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
どうでしょう。おわかり頂けましたでしょうか。僕は、句を作ったり歌を作ったりした事が無いので推測ですが、俵万智さんが多くの詩や歌を書くにあたって松尾芭蕉や多くの歌人の俳句や短歌を勉強しのでは?と僕は想像します。音楽の世界で言えば、今回紹介する「Everyday I Have The Blues」も多くのブルースマンにとって教科書のような存在であり、カヴァーも多くされてます。
歌うアーティストが違えば、同じ曲も全く別の曲になってしまうのがブルースの魅力。B・B・KINGも例外ではなく、ひとたび彼の手にかかればどんな曲でもB.B KINGの曲になってしまいます。
”絶妙な間”が心地よく響き、「1音鳴らすだけで、彼の音だと分かる。」と多くのミュージシャンに言わしめ、「アドリブソロを学ぶにはB.B KINGを聴け」、「早弾きやチョーキングなどのテクニックではない、彼自体が音楽だ」と語り継がれています。
1955年にリリースされたこの曲を、B.B KINGはこよなく愛し、晩年は必ずライブのオープニングに使っていたようですが、晩年のB・B・KINGのこの曲を聴くと本来の意味とは全く違う意味に聞こえてくるような気がします。同じアーティストでも歳を重ねるごとに全く違う曲に聞こえてくるのです。
(近年のEveryday I Have The Bluesがこちら)
この音楽ブログでも何度か書いていますが、パンクファッションやテクノファッション、レゲエファッション、髪型でいうとパンクは逆立てたヘアスタイル、ロックはリーゼント、テクノはサイドぱっつんのテクノカットといったように、音楽の裏側には必ずファッションとの繋がりが見えました。
じゃあブルースファッションは?ブルースヘアは??
ブルースは当初、酒場や寄り合いの場で演奏されていたため、ブルースマンのファッションといえばいわゆる労働着でしたが、時代が進むにつれ、スリーピースのスーツに中折れ帽がブルースマンのファッションスタイルとなっていきます。往年のブルースマンになると不遇の幼少期と自らの成功を比べるかの様に、信じられないくらい派手なジャケットを着る事も・・・。
しかしそれでもかっこいいのがブルースマン。笑
その代わりと言ってはなんですが、B.B は多くの言葉を残しています。
The beautiful thing about learning is that no one can take it away from you
「学びの素晴らしさは、誰もそれをあなたから奪えない事だ」
I never wanted to be like other blues singers. I might like hearing them play, but I’ve never wanted to be anyone other than myself. There are a few people that I’ve wished I could play like, but when I tried, it didn’t work
「私は他のブルース・シンガーのようになりたいと思ったことなど1度もない。彼らの演奏を聴くのは好きかもしれないが、自分以外の人間になりたいと思ったことはない。あんな風に演奏できれば、と思わされた人間は何人かいるが、いざトライしてみると上手くいかないのさ」
I never use that word, retire
「リタイア、私はこの言葉を絶対に使わない」
不遇の幼少期時代のを過ごし、そんなときにB.B 自身を救ってくれたブルース。そして、ブルースマンとしてひたむきに自分の選んだ道を信じ続け、決して驕らず常に学び続けることをやめなかったB.B
”ブルースは魂の叫びであり生き様である”と言われるように、アーティストの人生が映し出される、そんなジャンルなのかもしれません。その魅力は深く、まだまだ若僧の僕には本当のところで理解する事は難しいですが、いつかお酒を飲みながらブルースに酔いしれ、語れる大人になりたいものです。
しかし「 Blues Boy King (ブルース・ボーイ・キング) = B.B KING 」とは・・洒落てます。