Eddie Vedder

Eddie Vedder

「Guaranteed」

 

Eddie Vedder(エディ・ヴェダー)

 

1964年アメリカ・イリノイ州に生まれ、1991年ロックバンドPearl Jamのボーカリストとしてデビューしアルバム「TEN」をリリース、爆発的なヒットを記録します。

このアルバムはス発売初期こそスローペースな売れゆきでしたが、世界中で起こったグランジブームの後押しもあり、のちに1990年代最も売れたアルバムの1枚となることに。
バンドの知名度は世界中であがり、以前にも紹介したNilvanaとともにファッションにまで影響を与えたグランジ・ロックの中心的存在になりますが、Nilvanaのフロントマンであったカート・コバーンの死を持って、そのブームも終焉を迎えることになります。

しかし、『音楽好きが選ぶ最も偉大なアメリカのロックバンド』というテーマの読者投票では、あのEaglesなどの大御所バンドを抑えてPearl Jamが選ばれるなど、アメリカのロックファンの評価は随一のバンドなのです。

若者達にとってのPearl Jamは、当時活躍したどのロックバンドよりも、よりリアルで“俺たちを代弁するアメリカの音”と言われました。

そのバンドのヴォーカルであったEddie Vedderのソロナンバーである「Guaranteed」を今回はご紹介します。


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明るくもどこか寂しく、ギターの音が心地よいこの曲は、名優ショーン・ペンによって制作された映画「Into the wild(イントゥ・ザ・ワイルド)のサウンドトラックのいちばん最後に収録されています。

もちろん、この映画の音楽も全編Eddie Vedderによって制作されています。

このアルバムに関して特筆すべきことがまず一点。

このアルバムは、ほぼEddie Vedderのみの演奏で収録されています。つまりは、ギターはもちろんのことバンジョーの演奏、さらにドラムも全て自身で担当しているのです。

それもあってか、映画においての挿入歌といえば映像を引き立てるものとして使用されますが、本編映像以上にその楽曲に聴き入ってしまうこともたびたび。

では 、気になる映画のストーリーはというと。

裕福な家庭に生まれ、欲しいものは全て手に入る環境で育った主人公は、大学を優秀な成績で卒業します。彼の両親はハーバードのロースクールに進学することを望みますが、金で物ばかり与える親に嫌気が差した主人公は学費預金を全額寄付し、身分証を切り捨て、この世の心理を掴むためアラスカへと旅に出ます。

その旅の途中で様々な人と出会い、自然、さらには人と向き合うことで理想と現実の間に生まれる葛藤。

そんな主人公の生きることの葛藤や喜びを、11つ解きほぐす生き様を描いたノンフィクションの物語なのです。

歌詞の内容は、「ひざまずいては自由になれないどこへ行こうと自分らしく居よう、自由でいるために」というフレーズから始まり「僕に構わないで、道はみつける新しいルールで生きていこう、ゆるぎなく」と締めくくられのですが、まさにこの映画の楽曲はEddie Vedderが書くべき楽曲だったのかも思うようなエピソードがあります。

1994Eddie Vedderはバンドが売れ過ぎない為にチケット販売会社に対して3年間国内ツアーをしないというボイコットをしていました。

それでもPearl Jamの成功は、長い間彼に対して重いプレッシャーとしてのしかかり、苦悩したそうです。

「楽曲制作自体が、映画の物語に沿って作る必要があったため、曲が挿入されるシチュエーションやストーリーは楽曲制作前にほぼ決まっていた」とインタビューで答えていますが、そのエピソードを知ったとき、「自分の理想と現実のギャップにおかれる人生の葛藤をこの映画で重ねたのでは」と僕は思ってしまいました。

監督のショーン・ペンがどこまで彼の苦悩を知り依頼したのかわかりませんが。

 

あと、この曲には一つ気になるところが。

240秒あたりからの何故か数分間、無音の空白があります。
この空白にどんな意味があるのか。
ショーン・ペンの意図したものなのか。
それともEddie Vedderの意図したものなのか。
真相はわかりません。

音を入れないということも曲を作ることになる。

まるで僕らが、お客様の髪を前にした時に、切らないという選択を取ることもヘアスタイルを作る部分に似ている気がします。こんなことを考えていると、もう一度映画と共に、聴き直し、見直してみたくなってきました。

ちなみにこの Into The Wild 
男子にはめっぽう人気のある作品で、誰もが心の中にこんな冒険をしてみたいという野望を持っているでは。今年の夏休みにトライしてみてはいかがでしょう。男っぷりがあがるかもしれません。

Double 中原章義