
SPECIALS
SPECIALS「Little Bitch」
「ワン、ツー♫」
軽快なフレーズ始まるこのイントロを、耳にしたことがある方も多いと思います。90年代から00年代前半クラブですかのイベントがあると、必ずと言っていほどこの曲が流れ、フロア中は大盛り上がりでした。
発売から35年経った今も全く色あせることのない永遠の青春スカソング、SPECIALSの「Little Bitch」を、今回は紹介します。
1977年/イギリスにてSPECIALS結成
2トーンスカと呼ばれるジャンルの草分け的存在だったSPECIALS。まずは、このバンドが生まれるに至ったイギリスの状況から今回は紐解いていこうと思います。
当時、イギリスは経済不況真っ只中にあり、失業者も100万人をこえ、街にはフラストレーションのたまった若者が溢れ返っていました。そんな状況下で生まれたパンクという音楽ジャンル。その代表的バンドといえば、以前このブログでも紹介されたSEX PISTLES等がいましたが、彼らはアナーキー(無秩序、無支配)の思想を掲げ、多くの若者たちがそれに呼応し、大ムーブメントとなっていきます。
髪の毛を逆立て、鋲を打ち付けたボロボロのレザージャケットを羽織り、それは、攻撃的とも言えるファッションに身を包み、「too first too live,too first too die」(行き急ぐ人生、死に急ぐ)を地で行くパンクスたち。しかし、若者のフラストレーションと経済状況が核爆発したようなこの流行は、長くは続きませんでした。
あまりに早すぎたシド・ヴィシャスの死によってSEX PISTLESは解散し、パンクムーブメントは息切れするかのように下火に。その代わりにと言ってはなんですが、そこへ台頭して来たのが2トーンスカというジャンルでした。
そんな背景の1979年、SPECIALSはバンド名をそのまま冠にしたアルバム『SPECIALS』を発表。彼らは時代を逆行するように、60年代にイギリスで流行したモッズファッションに身を包み、それまでにあったパンクミュージックにレゲエを混ぜたような独特な音楽スタイルを産み出します。
そして。
今では全く珍しくありませんが、人種差別もまだまだあったこの時代に白人と黒人の混合バンド編成。SPECIALSのような音楽を2トーンと呼ぶ由縁でもあります。
すべてが型破りの彼らのスタイルは、当時のイギリスはもちろんの事、世界中を見ても異例でしたが、大衆に認められるまで時間はかかりませんでした。
それはなぜか。
もともと当時のパンクスたちがライブハウスやクラブで好んで聴いていたのは意外にもレゲエ。彼らは流行に敏感で、それまでのイギリス的な封鎖感覚は持ち合わせておらず、良いものは良い。という素直な感覚でアンテナを張っていたため、SPECIALSのすばらしさに気付くまで時間はかからなかったようです。
パンクが激しいリズムにのせて、がなり立てるような歌い方で暴力的なイメージなのに対し、スペシャルズ(2トーンスカ)はレゲエの裏打ちのン、チャ、ン、チャという陽気なリズムの上にパンク的なメッセージを歌うという、それはまるで、踊りだしたくなるようなスタイル。
歌詞についてはパンク同様、反社会的なものが大半でしたが、彼らにとってそれは大義ではなく、もっと個人的な不満や苦悩をレゲエのリズムにのせることの方が大事であり、暴力ではなく音楽としてメッセージを主張したかったのです。余談ですが、ファーストアルバムだったにも関わらず音楽として完成されていた事も、このアルバムのプロデューサーがエルビス・コステロだった事を知れば頷けます。
この曲が収録されているファーストアルバム「specials」の1曲目”A Message To You Rudy”は、もめ事を起こすのはやめろよ!いい加減に足を洗えよ!自分の将来を考えてみな!という内容の歌詞。7曲目の”too much too young”はあまりにも若すぎた、と自虐的な内容の歌詞。
そして8曲目のこの「Little Bitch」
簡単に説明すると”かっこつけんなよ”と皮肉たっぷりの内容の歌詞。
あまりに危険で、生き急ぎすぎたパンクムーブメントに対するSPECIALSからのアンサーアルバムだったのでは、と思います。
しかし皮肉にもこの2トーンムーブメントも短命に終わってしうことに。
メンバー同士の確執、反社会的なメッセージ、ライブでの暴力事件など、問題は後を絶たず、1981年短いバンド活動に終止符を打つことになります。
SPECIALS解散とともに2トーンムーブメントも徐々に下火となり、また次のムーブメントへと移り変わっていきますが、SPECIALSの作り上げた2トーンスカは一過性のブームでは終わらず、のちの音楽シーンに多大な影響を与えます。
セックスピストルズ同様、ここまで短命ながら30年以上たった今も色褪せない曲を産み出したSPECIALS
彼らのスタイルは、他の誰とも似ていない唯一無二のスタイルでした。
もしもタイムスリップできるなら、この時代のイギリスに行ってみたい、そしてクラブでこの曲で踊りたい!
きっと「ワン、ツー♫」のリズムに病みつきになるはず♪ いや、なりたい!!影山でした。