
XTC
XTC 「Senses Working Overtime」
1970年代後半、ギターヴォーカルのアンディ・パートリッジを中心に結成され、イギリスで起きたパンクムーブメントの最中に頭角を現したXTC。
本国での商業的な成功はそこそこでしたが、彼らはいわゆる玄人受けのいいバンド。ニュー・ウェイブ※の先駆け的存在となり、その後の音楽業界にも大きな影響を与えました。
※パンクムーブメントによって音楽環境が、一変したイギリスで、電子音楽やレゲエなど様々なジャンルの影響によって成立したロックのジャンル。
初期の頃はパンク色の強かった彼ら。ファッションもTシャツに細身のパンツ等、よくありそうなバンドマンのファッションでしたが、段々とキャッチーな英国ポップと、彼ら独特のユーモアのセンスたっぷりの歌詞や、アレンジを融合させ、「ひねくれポップ」と後に呼ばれる独自のジャンルを築いていきます。
それに従ってなのか、次第にファッションもデニムonデニムや、セットアップに色付きの丸いサングラス。メンバーのヘアスタイルも前髪が極端に短いウルフなど70年代後半~80年代独特の個性的なファッションやヘアスタイルへと変わっていきます。
バンド名のXTCとは『ecstasy(エクスタシー)』をもじったもの。その由来通り、彼らの音楽に分かりやすい起承転結は無く、いい意味で常に期待を裏切られる曲ばかりでした。そしてそれはとても心地よい「違和感」のある音楽で、今回ご紹介する「Senses Working Overtime」も、初めて聞いた時からサビのフレーズが耳に残って離れない1曲。
最初は歌詞の意味も知らずに聞いていましたが、調べてみると最初から最後まで「五感が、働いているって何て素晴らしいんだ!」という事についてだけを歌っているという、やはり曲調だけでなく歌詞も不思議です。
そしてそれはステージパフォーマンスについても同じ。この曲のLIVE映像では、大きなスフィンクス?の様なオブジェを両サイドに置き、最初はドラムの前に全員がうつむいて座っています。曲が始まると徐々に動き出し演奏し始めるという、なんともシュールな世界観。
そんな、不思議な魅力たっぷりの彼らは、この時期に人気、セールス共に好調で、「ひねくれポップ」という独自のジャンルも確立されていました。
しかし、そんな彼らの転換期はいきなり訪れます。
この曲の収録されたアルバム『English Settlement』を収録した後に、ギターヴォーカルのアンディがステージ恐怖症に陥り、全てのライブ活動を停止。まともなプロモーションが出来なくなり、セールス、人気共に下降線を辿る事に。
では、日本でのXTCの人気度はというと。
当時、YMOの坂本龍一は、アンディの音楽性に触発されソロアルバム「B-2Unit」を制作。さらにはアルバム制作にアンディをギタリストとして起用しています。
さらには、ピーター・バラカン氏がラジオで彼らを紹介するなどして日本での人気はイギリスよりも高かったのです。ムーンライダースの鈴木慶一や、奥田民生、最近ではサカナクションの山口一郎もその影響を語っているそうです。そこからも、日本のポップシーンにおいてXTCの存在感が伺えますね。
「XTCの75%は俺だ」と自身が語るように、XTCの曲の大半はアンディが作っています。さらにレコードやCDジャケットのデザインも彼のイメージを基に作られており、実質上のアートディレクターも彼。しかし、こだわり抜く職人気質ゆえにメンバーやプロデューサーとの衝突も少なかったよう。
一見面倒くさいタイプのアーティストですが、そこまでこだわり抜いたからこそ、今の時代にも通用する音楽として残っているのですね。
人と違うことをする事。
難しいけど、どの世界にもそういうパイオニア的な精神は必要だし、そういった人の存在こそが、いつも刺激になります。
回りの人が全員そうだと、大変ですが、、(汗)