
Bob Marley
Bob Marley 「One love」
一度聞いたら耳に残る心地よさ。優しいのに、強さのあるその特徴的な声は、誰もが一聴きでボブ・マーリーだとわかるほど。
今回ご紹介する曲、このOne love はTVやラジオでも夏になるとよく耳にする曲のひとつです。そして、レゲエといえばラブ&ピースというイメージですが、このジャンルが最初から愛や平和に溢れたイメージを持っていたわけではありませんでした。今回はまず、このレゲエというジャンルとボブ・マーリーの生い立ちから紐解いていきたいと思います。
ボブ・マーリー(本名:ロバート・ネスタ・マーリー)は1945年にジャマイカ北部海岸沿いの村ナイン・マイルズで、61歳のイギリス軍人の父と18歳のジャマイカの人の母の間に生まれました。産まれた当時、父とは別居しており、血のつながり以外での一般的な親子関係は、ほぼなかったそうです。
当時、白人は貧しい黒人を支配する側で、黒人である母は支配される被支配者側。そんな時代背景や生い立ちから彼は混血というであることに苦しむ幼少期を過ごします。
そんな苦しみから、彼を救ってくれたのが音楽の存在でした。教会に通うことでゴスペルを歌い、母方の祖父からギターやオルガンの弾き方を教わることで自然と音楽にのめり込んでいったのです。
そんなかいもあってか、彼が14歳の時、音楽に専念するために学校を中退することを決意します。
しかし、そこから3年後の1962年に17歳でデビューするも、レコードはまったく売れず。さらには生活が苦しくなりホームレスを体験するほどでした。
しかし意外なところから彼の音楽人生が変わり始めます。
1974年、ボブ・マーリーが30歳の時ソロ活動をし始めたばかりのエリック・クラプトンが、彼の曲「アイ・ショット・ザ・シェリフ」をカバーしたのです。そのアルバムがなんと、全米1位を獲得し、原曲を歌っていたボブ・マーリーの名は世界中に広がることに。
そんななか翌年にリリースした「ノー・ウーマン・ノー・クライ」は世界的な大ヒットを記録、ボブ・マーリーは「第三世界を代表するスーパースター」と呼ばれるほどになります。
レゲエの神様・魂の反逆者・叫ぶ平和の使者など様々な呼び名を持ち、ファッションやアート作品色々なシーンで見たことがあるボブ・マーリー。そして、ただ歌うだけで終わらない事が、偉大なアーティストの条件だとすれば、彼は偉大すぎるほどに偉大なアーティストとも呼べるかもしれません。
なぜか。
こんなエピソードがあります。
1976年のジャマイカといえば政党間で資本主義体制と社会主義体制の対立が激しく、一部内乱のような状態になっていました。思い立った彼は音楽の力で平和を取り戻そうと、ジャマイカの・キングストンで「スマイル・ジャマイカ・コンサート」を計画します。
しかしこれが原因で二大政党の抗争に巻き込まれ、狙撃されて重傷を負うことに。
命の危険を感じたボブ・マーリーは仕方なくイギリスへ亡命。それから2年の月日が流れた1978年、彼は再びジャマイカに戻り後にの地を踏み、のちに伝説のコンサートと呼ばれる「ワンラブ・ピース・コンサート」に出演します。
ここで彼はとんでもない偉業を達成する事に。ステージを見に来ていた敵対する二大政党の党首2人をステージ上に招き、和解の握手をさせてジャマイカ内乱を終結させたのです。
*その模様が4:00くらいのところにあります。
音楽で政治と人の心をも動かし、彼はこの瞬間、文字通り歴史を変えたのです。
なぜここまで人々の心を動かすことが出来たのか。
それにはラスタファリニズムという思想の影響もあるでしょう。
ラスタファリニズムとは。
簡単に言うと、全ての黒人はアフリカの大地に戻るべきであり、さらにはアフリカで産まれた最初の国の王を神とし、あがめるべきであるという考え方。その中でも有名なのはマリファナを吸っても良いという考え方なのですが、これは、「マリファナを吸う事で心がアフリカの大地に還る」という信仰の基に推奨されていました。ほかにも体に刃物をあててはならないという教えから、髪を切る事や髭を切る事が禁じられており、そういった背景もあって伸びっぱなしの髪や髭がドレッドというヘアスタイルを産んだとも言われています。
当初は、危険な思想だとしてジャマイカでも迫害を受けていたラスタファリニズムですが、ボブ・マーリーが活躍するにつれて、多くの人に受け入れられるようになったという背景もあります。同じ思想のもと、同じ音楽を聴いていたジャマイカの人たちにとって、どれだけボブ・マーリーの影響が大きかったのか窺い知る事が出来ます。
そんな中、つくられたこのOne Loveという曲。
歌詞のなかには、
人は愛する事を知っており、それを感じる心も持っている
みんなで、今、それを感じよう
子供の泣き声がきこえるでしょう?
愛と思いやりの精神の素晴らしさを伝えてあげよう
そして、神に感謝しよう
こういった他人に感謝する旨の歌詞がたくさん入ってます。
そして、ついに。
長い迫害の歴史や、自国の内戦からやってくる苦悩の基にボブ・マーリーはレゲエ=LOVE &PEACEのイメージを作り上げたのでした。
最後に彼の格言をひとつ。
「もう言葉は充分だろ。今すぐ、行動に移そう」
今回のこの記事を書くにあたって彼の言葉は時代を超えて僕にも伝わってきました。
いや、刺さりました。
やばいな、ボブ。。
今日から、今から何か少しでも行動に移そう。そう心に決めた中原でした。
Double 中原章義