HEARTS/Double Bside

HEARTS
Double

Singalong

2016,04,30
John Mayall & The Bluesbreakers
DOUBLE CROSSING TIME

アシスタント時代の若かりし頃、休日前の過ごし方といえば、きまってロンドンナイトへ出かけることでした。
そこでよくかかっていたスカバンド THE TROJANS 。ヘタウマで力が抜けた感じが大好きでした。

THE TROJANSにはまりかけた頃、彼らがどんなきっかけでデビューしたのかを調べているうちに、THE TROJANSのリーダーであるギャズ・メイオールの父親がジョン・メイオールであることに行きつきました。

「ブリティッシュブルース」の父と呼ばれているジョン・メイオール。

ブルースと聞くだけで、当時の自分にはまだまだ敷居が高いような気がしていましたが、これだけは別でした。
なぜかって。
イギリス好きだった私にとっては、「ブリティッシュ」という名が加わるだけで、ブルースに感じていた敷居が、いともたやすく無くなっていたのでした。

そんな「ブリティッシュブルース」の入り口として最初に手にしたアルバムが、今回ご紹介する「 BLUES BREAKERS WITH ERIC CLAPTON 」というアルバムです。単純に自分が知っているミュージシャン、エリック・クラプトンの名前がアルバムのタイトルに入っていて聴きやすそう♪という発想で選んだこのアルバムでしたが、、あまりのカッコよさに、このブルースロックのアルバムにどっぷりとはまってしまいました。

 
*このアルバムジャケットでクラプトンが読んでいるコミックは、「ビーノ」というイギリスの子供向け長寿コミックで、それにちなんでこのアルバムは「 ビーノ・アルバム 」とも呼ばれています。

ヤードバーズ、ブラインド・フェイス、デレク&ザ・ドミノス、クリーム・・・
数々の有名バンドに所属しつつも、メンバーとの方向性の違いなど様々な理由により脱退と加入を繰り返すエリック・クラプトン。1965年、まだメジャーではなかったジョン・メイオール率いる「BLUES BREAKERS」に誘われます。

いまでこそヴォーカルとしても数々のヒット曲を残しているクラプトンですが、このアルバムで初めてのその声を披露することになります。それが「 RAMBLIN' ON MY MIND 」という曲です。 

今回はこの曲を紹介しようかと思ったのですが、この曲はロバート・ジョンソンのカバー曲なので、やはりジョン・メイオールと一緒に制作したオリジナル曲、「 DOUBLE CROSSING TIME 」を紹介したいと思います。

iTunes : DOUBLE CROSSING TIME

この曲はスローブルースで、ギター・ソロが恐ろしくカッコいいんです。ジョン・メイオールのちょっと外した感じ(笑)のヴォーカルも味があっていい。

この曲以外でもこのアルバムは、どれをとっても素晴らしい楽曲ばかり。たまにジョンのヴォーカルがいらないかもって思うこともありますが、そんな方にはインストの HIDEAWAYもオススメです。

エリック・クラプトン、若干21歳。この頃「 CLAPTON IS GOD 」の落書きがロンドンの街中に出現し始め、すでに天才ギタリストと呼ばれていた彼ですが、このアルバムから本格的にブルースの道を歩むことになります。

ブロードキャスターのピーター・バラカン氏が以前に「 ジョン・メイオール&エリック・クラプトンの意味を理解しないと、クラプトンの成し遂げた凄さは分からない 」と言っていたそうですが、お互いに多大な影響を与えあう時期がここから始まったのだと思います。

 

そしてこんな逸話も。
BLUES BREAKERSに在籍中のクラプトンは、やはりここでも落ち着きを見せることはありませんでした。彼がとあるライブをドタキャンして、メンバーが困っていたところ会場にいたひとりの少年が「自分に弾かせてくれ!」と頼みに来たことがあったそうです。飛び入りで参加したその少年は、見事にクラプトンのパートをパーフェクトに演奏し、メンバーと観客を驚かせたんだとか。

この少年の名前はミック・テイラー。

そう、実はこの少年、ブライアン・ジョーンズ亡き後のローリング・ストーンズのメンバーになるミック・テイラーだったのです。もちろんストーンズに参加する前には、このライブをきっかけにクラプトンの後任としてBLUES BREAKERSに参加することになるのですが、そこに行き着くまでの逸話が、また面白い!

クラプトンがBLUES BREAKERSを脱退したあと、すぐに新しいメンバーをと思っても、クラプトンのような凄腕のギタリストを探し出すのは至難の技。そこで、ジョン・メイオールは、以前に飛び入りでライブに出た名も無き少年のことを思い出します。当時はインターネットなんて無い時代。街中にポスターを貼って彼を捜し出したのだそう。

この時、ミック・テイラーわずか17歳!
ポスターを張って探し出すということが今では信じられないですよね。
その他にも、ジョン・メイオールは彼のバンドから多くの素晴らしき才能達を世に送り出しています。ミック・テイラー以外にもピーター・グリーンやジョン・マクヴィー(フリートウッド・マック)など他にもそうそうたる面々をバンドから排出し、ミック・ジャガーは彼のバンドを「 The John Mayall School 」と呼んでいたほど。
先述したジョン・メイオールが「ブリティッシュブルースの父」と呼ばれる所以はそこからきているのです。

 

ブルースとは、伝統にとらわれない幅広いスタイル。現在ではジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンなど、ロックとブルースを掛け合わせ、もしかしてこれパンク?と思わせるようなバンドもいます。
そんなブルースロックの原点は、BLUES BREAKERSにあったのかもしれません。

 

written by

HEARTS / 田中直美