2016,05,07
Foo Fighters
「Everlong」
「Foo Fighters」
1995年にデビュー、アルバム総売上は2000万枚を超え、2012年までにグラミー賞を11回受賞。ロック・フェスの常連でもあり、今やヘッドライナー以外で出演することはまず考えられないほどの人気バンドです。
それは本国アメリカのみならず、ヨーロッパや南米、オーストラリアや南アフリカ、勿論ここアジアでも同様。つまりは、現代のロックシーンの頂点に最も近いバンドの一つなのです。今年で結成20年を迎え第一線で活躍しつつ世界中で安定した人気を維持し続けている数少ないバンドでもあります。ちなみにバンド名は第二次世界大戦時に未確認飛行物体のことを指した言葉「フー・ファイター」から由来しているそうです。
ギターヴォーカルでバンドのフロントマンであるデイヴ・グロールは、90年代の伝説のバンドとして知られている Nirvana の元ドラマーでもありました。ドラマーがギターヴォーカルとして成功を収めること自体が稀有であり、それに加え20年間セールスの上で大きなスランプに陥る事なく走り続けてきた彼は、ミュージシャンとしてはもちろん人間的にもファンが多い事で有名です。
デイヴ・グロールの周りには幅広い世代のミュージシャンが集まり、お互いリスペクトしあっていることでも有名。ボブ・ディランがフー・ファイターズの曲をライブでカバーしていたり、他にもポール・マッカートニーやニール・ヤング、ボブディラン、エルヴィス・コステロなど様々なアーティストと共演しています。
そして見た目とは裏腹にフランクで気さくな一面も。
ライブMCでは威張った態度一つ見せずジョークを飛ばし、さらには誕生日の観客をステージにあげて一緒に歌うなど、その行動には好感を抱いてしまいます。
今回はそんなフー・ファイターズの代表曲ともいえる「Everlong」を紹介します。
「Everlong」とはずっと長い間という意味。
1996年クリスマス。写真家のジェニファー・ヤングブラッドと離婚したばかりのデイヴ・グロールは、資産分与期間中で手持ちの現金もなく銀行口座にもアクセスできない中、当時のドラムとギターがバンドを辞めたいと言ってきて、まさにどん底の状態でした。そんな時に思い立ってわずか15分で書いたのがこの曲です。彼はこの曲についてこう語っています。「誰かとしっかりと結びついていたいって想いは、たとえそれが肉体的あるいは精神的にせよ、永遠に続くものではないとわかっている。でもやっぱり永遠に続いて欲しいという願いはある。それを歌っているんだ」PVもパロディ仕立てになっているけれど彼女を守りたいという気持ちが夢になった物語ですね。ニルヴァーナはカート・コバーンの個性が強く、簡単に言えば鬱々している。(その影のある感じが良いんですけどね)それに対してフー・ファイターズは前向きでまっすぐで力強い。どん底の状態でも迷いを感じさせない。メロディーが飛び抜けて明るく、キャッチーでキレがいい。イントロから徐々に盛り上がって、デイヴがギターをかきならすところはまるでデイヴが「辛い事があってもポジティブに前を向け!」と落ちた気持ちを引っ張りあげてくれました。何度聞いても…かっこいい。英語で何を歌っているのかはっきりわからない頃の僕にも、この曲は迷いがなくまっすぐで力強い。
どの曲からも音楽への情熱が確実に伝わってきます。では、音楽への情熱とはいったい何なのか?
ここで彼の音楽への情熱がわかるエピソードを一つ。
2015年6月スウェーデン公演での出来事。ライブ中にステージから転落しなんと足を骨折してしまいます。そこでライブが中止になると思いきや、なんと応急処置をしてステージに復帰。そのままデイブはライブをやりきってしまいます。椅子に座って熱唱するデイブはハードコアのルーツを裏切らない、そんなミュージシャン魂を見せつけます。その後7月上旬にはアメリカで20周年ライブ…そして7月下旬には日本でのフジロックのヘッドライナーを務めることになっていたフー・ファイターズ。普通だったらそのままツアー出演はキャンセルしてしまうところですが…
Fenway! The Foos are set to take the stage at 8pm tonight. Who's ready? pic.twitter.com/sO05a0TJ3d
— Foo Fighters (@foofighters) 2015年7月19日
LA, thx so much. You were amazing. Coming for you next San Diego. Ltd tix available - get in: http://t.co/DcyWDpQfC1 pic.twitter.com/HmAvyXvMxM
— Foo Fighters (@foofighters) 2015年9月23日
Never have I come so close to peeing my pants @foofighters pic.twitter.com/3D9vIbFQcs
— lexi blair (@lexiblairr) 2015年9月17日
そこは我らが兄貴デイヴ・グロール。デイヴをかこむライトと無数のギターヘッド、まるで雷神様のような特設椅子で登場。これには度肝を抜かれました。こんなのありっ?そして骨折を感じさせないほどのパフォーマンスを見せてくれました。さらには彼の骨折したレントゲンをTシャツにしたり「Break a leg」 足を折れ!と書かれたグッズが続出。そして極め付けはフジロック後の全米ツアーの名前を「Broken Leg Tour」 骨折ツアーに変え続行してしまうあたりが彼らしい。フー・ファイターズ、デイヴは肉体的にも精神的にも、とてもタフな男たちなのです。
Thank you Gothenburg. That was amazing. pic.twitter.com/BXvuxIfVEv
— Foo Fighters (@foofighters) 2015年6月12日
@foofighters @KlipschMusicCen CJ's 16th birthday today ready to rock with the greatest band in the world!! #breakaleg pic.twitter.com/YOaB7DiWgP
— Pete Heugel (@pheugel1) 2015年8月27日
どんな時でも常に前向き。何があっても前へ前へ。彼のガッツを支えてきたDIY精神と汗水たらしてなんぼなプロ根性にはいつも心を奮い立たせられます。
デイヴのように真っ直ぐでいい人間がちゃんと輝くのを見るのは、それだけでも最高にポジティブじゃないですか。そんな彼に憧れてデイヴのトレードマーク、黒髪・ブラックデニム・黒いTシャツを真似した時期もありました。デイヴの真似をしたらずっと彼とつながって、ポジティブになれる気がして…どんな時でも情熱をもって「前を向いて」進むんだ!
そう!たとえ骨折してもね!笑
*筆者は2015年のヘアショー中に足を骨折しています。
written byDouble / 中原章義