2016,10,08
Todd Rundglen
「Hello It’s Me」
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— Todd Rundgren (@toddrundgren) 2014年6月20日
音楽オタク、奇才天才と言われるトッド・ラングレン。
トッド・ラングレンは、1970年代からいち早く自分で全ての楽器を演奏し、ヴォーカルも撮りながら自宅録音を行ったマルチプレイヤーとしても知られています。
また、シンガーソングライターとしてだけではなく、XTCやパティスミス等多くのアーティストのプロデューサーやエンジニアとしてもその溢れる才能を発揮し、自身で演奏できる楽器はギター、ベース、キーボードにドラムと多岐にわたります。
1972年、ソロになって通算3枚目のアルバム”Something/Anything?”をリリース。トッドがほぼひとりで多重録音したというこの2枚組のアルバムは、”I Saw the light”を筆頭に、どの曲がシングルヒットしてもおかしくない、名曲だらけの名盤として仕上がります。
今回はこのアルバムから『HELLO IT’S ME』を紹介します。
この曲は、トッドにとって作曲歌としては処女作でもあり、1968年に所属していたバンド”NAZZ” のヒット曲でもあり、それをセルフカバーで再レコーディングした曲なのです。
当時の映像を見ているとトッドのヘアスタイルが数年前から世界的に流行ったレイヤースタイルに合わせた、ブルーをベースに淡いピンクやオレンジのインナーカラーが洒落ていますね。髪の色と眉毛を合わせたり、目元に蝶の羽のようなものが貼ってあったり・・・音楽だけを聴いているとこのヴィジュアルが少し意外なような気もしますが、独自のスタイルを貫いているところからも奇才と言われる由縁かもしれません。
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— Todd Rundgren (@toddrundgren) 2015年9月17日
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— Todd Rundgren (@toddrundgren) 2014年10月24日
私がこの曲を知ったきっかけは映画”The Virgin Suicides”を観たことから。
もちろん可愛い部屋にぴったりのファッションも見どころのひとつなのですが、10代の不安定な女子の心情を上手く捉えたストーリー(明るい内容ではないけれど)の中に散りばめられる劇中歌が名曲揃いなのです。トッド・ラングレンをはじめ、Carole King、Gilbert O'Sullivan、Bee Gees、10CCやHEARTにAIRと、60年~90年と幅広い年代で活躍したミュージシャンの楽曲が絶妙のタイミングで流れ、映像と音の世界にグッと引き込まれていきます。
そしてなんと言っても語るべきはこのシーン。
近所に住む男の子達が憧れの姉妹に電話かけ、受話器越しに”Hello It’s Me”レコードで流します。
「もしもし僕だよ」
そして、番号を早口に伝えて電話を切ると、姉妹からのかかってきた電話の返事は、受話器越しに流れる GILBERT O’SULLIVANの”ALONE AGAIN”
メッセージを音楽にのせて送り合うなんてとてもロマンティック。
このシーンの音楽の使い方が大好きでとても印象に残っています。
*35秒くらいから先述のシーン
そして映画の内容とリンクするようですが、”Hello It's Me”は少し複雑な状況になりつつある恋人たちの関係を綴った歌でもあります。
面と向かっては言えない繊細な気持ちを「電話でなら素直に伝えられるかも」という男の人のナイーブな部分を歌っている世界観が儚げな声とメロディにぴったりです。
思春期に緊張しながら、気になるあの人に電話をかけたり、かかってきたり・・・この曲を聴いていると、ふと、甘酸っぱいそしてマーブル模様のようなあの記憶が甦ってくるようです。
誰もが一度は経験する、懐かしく眩しいあの頃の「そっと心の中にしまっている思い出」とともに聴いてほしい、そんな一曲です。