2017,05,13
THE STONE ROSES
「FOOLS GOLD 」
2017年4月某日、超満員の武道館。
予想通りに年齢層が高めの会場内は、妙なソワソワ感に包まれていました。
おそらく多くの人がこう思っていたはず。
「大丈夫かなぁ、ちゃんと盛り上がれるだろうか自分・・・」
開始予定の時刻を10分ほど過ぎた頃、暗転の中突然響き渡るマニのベースライン。
詰めかけた観客の大歓声に迎えられ眩いほどの光の中から現れたイアン。
スタートはお決まりの「 I Wanna Be Adored 」
私たちの不安は一瞬に消し去られ、一気に28年前にタイムスリップ。
もちろん、客席は大合唱。
やっと会えた喜びで私も大声を張り上げてました。
音楽雑誌クロスビートでの「 ミュージシャンが選ぶ人生を変えた名盤100枚 」ではビックネームを抑えNo.1に輝いているこのバンド
「 THE STONE ROSES 」
活動していた約10年の間に発表したアルバムはたったの2枚。
2012年、彼らの故郷であるマンチェスターでの再結成ライブには22万人を動員したことは記憶に新しい出来事です。
オアシスのギャラガー兄弟やブラーのデーモン・アルバーンなどが、音楽に興味を持ったきっかけとして彼らを挙げていたり、今なお活躍しているアーティストからも熱い支持を受けている彼らの魅力って?やっぱり圧倒的なライブパフォーマンスに尽きるのではと思っています。
初来日時のセットリストプラス、89年に発売されたファーストアルバム以降にリリースされている曲の中で今回のライブで一番聴きたかった曲「 FOOLS GOLD 」を紹介します。
9分53秒という彼らの作品の中でも最長の曲であり、こんなにも長い曲はあまり世に出ていませんが、その長さを感じさせず気持ち良く入り込める曲です。
THE STONE ROSES は、1983年幼馴染のジョン・スクワイア(ギター)とイアン・ブラウン(ヴォーカル)によって結成されました。ドラムのレニ(84年、加入)、THE STONE ROSES に加入する前から彼らと知り合いだったマニ(ベース)が87年に加入。
ファーストシングルは85年に発表しており、何度かメンバーチェンジを重ね今のメンバーで本格的に活動開始します。
80年代も終わろうとしていた頃、彼らはバンド名と同じ1stアルバム「 THE STONE ROSES 」( アルバムのジャクソン・ポロック風のアートワークはジョンが描いたもの)を発表します。ハッピー・マンデーズやシャーラタンズなどと*マッドチェスター・ムーブメントの中心的存在として90年代初頭にかけて活躍。
*マッドチェスター・ムーブメント=マンチェスター×マッド(狂った)の造語
1996年、一旦は解散してしまいますが2011年春、マニの母親の葬儀でそれまで絶縁状態だったジョンとイアンが15年ぶりに再会。再結成は絶対にありえないと言われていたバンドが動き始めてしまったのです。
私が彼らのパフォーマンスを初めて目にしたのは、89年の初来日公演でした。
公演が始まる前に会場に響くアナウンス 。
「 アーティストの意向によりアンコールは行いません。パンフレット等の販売もありません。」
いつものコンサートとはちょっと違う空気に、どんな風に始まるのか期待感がハンパなかったことを記憶しています。
暗闇の中、爆音で響くマニのベースライン。
「 I Wanna Be Adored 」
レニのドラムが誰よりも前に出ていて(レニの腕前は、ピート・タウンゼントがザ・フーの為に雇おうとしたと噂されたほど)彼ら特有のダンサブルな曲に、弾けるどころか雷に打たれたかのような衝撃でただただ呆然と立ち尽くしていました。
自宅の間接照明かってくらい薄暗いステージ、MCが一切無い徹底ぶり。
まるで聴衆が全く目に入っていないかのようなパフォーマンス、異空間に自分だけが存在しているような錯覚、でもいつの間にか会場が一つになっていく一体感、そんな瞬間に立ち会ってしまったのです。
この時のライブは、のちに雑誌等で著名人の[ 私のベストライブ100 ]という特集があると必ず上位にランクインするほど。
これまで数多くのアーティストのライブに足を運んできました。今回の武道館での公演が、彼らのベストパフォーマンスだったのではと巷では囁かれたりしているようですが、だんだんと薄れていく記憶の中で思い起こしてみてもあの時のローゼズに勝るものはないと思っています。
「 80年代の音楽?そんなものがあったなんて知らなかったよ」かつてジョンとイアンは語っていました。
88年、マンチェスターのライブハウスで初めてローゼズを見たギャラガー兄弟。兄のノエルはこのライヴを観に来ていたインスパイラルカーペッツのメンバーと知り合いになり、彼らのローディーに誘われ音楽の世界への第一歩を歩み始めることに。一方、音楽に全く興味がなかった弟のリアムは、ステージ上のイアン・ブラウンの存在感に心奪われ音楽にどんどんのめり込み自らもバンドをやりたいと強く思うようになったそう。
「 90年代の主役はオーディエンスなんだよ」
オアシスやブラーを筆頭にレディオ・ヘッド、ニルヴァーナ等の登場に手を貸し、退屈していたオーディエンスの心を再び取り戻してくれたTHE STONE ROSES。彼らこそがキラキラと輝く90年代の扉を開け放ってくれたんだと感じています。
トレインスポッティング2(T2)公開、ツインピークス3シーズン放送開始、小沢健二20年ぶりのシングル発表、コーネリアス11年ぶりにアルバム発売。そしてこの2組がフジロックの同日に参加。
90年代リバイバルが熱い2017年。
過去を振り返るのってあんまり好きじゃないけど、今年はちょっと立ち戻ってみようかな。
それにしても、相変わらずなイアンの音の外しっぷりやモンキーダンスは健在。
*イアンのニックネームは「 Manchester King Monkey 」マンチェスターのボス猿 ・・・
そこにきて他のメンバーのクオリティの高いパフォーマンスは28年前と変わらず。
物販があったこと、ステージ上に灯りがついていたこと、イアンがちょっとだけMCしてたことが月日の流れを感じさせてくれた。
アンコールはやっぱりなかったけど・・・笑
written byHEARTS / 田中直美