2017,11,08
くるり Remember me
普段からNHKのドキュメンタリー番組を好んで見る機会が多いのですが、その中でも最近よく見る番組が「ファミリーヒストリー」。
この番組のコンセプトはNHKのHPによると、「著名人の家族の歴史を本人に代わって徹底取材をして「アイデンティティ」「家族の絆」を見つめる番組となっています。
そして、この番組の主題歌が くるり「Remember me」。
今回紹介したい曲です。
くるり 『Remember me』
2013年10月23日発売 作詞 Shigeru Kishida 作曲 Shigeru Kishida
実はこの曲はこの番組のための書き下ろしで、「ご自身の家族のことを思い出しながら作ってください」とNHKの方に岸田さん(vo,g)が言われて書いた曲なんだそうです。
そして「ファミリーヒストリー」に岸田さん本人も出演してるんですが、岸田さんの父方母方双方のルーツ、関係者の証言や古い記録を徹底取材で発掘し、今まで分からなかった家族の真実が次々に、明らかになっていました。
毎回、番組の終盤にさしかかってくる頃に「Remember me」が流れてくるんですが、これがまたグーッと心に沁みてくるんです。
もちろん番組の編集の力も大きいと思うんですが。
もう何度も聴きました。
曲の印象はというと、
少し味付けが控えめ、こってりしていない。
あれ、そうくるの?という、良い意味で裏切ってくれる。
リラックスした感じがいつのまにか癖になっている、そして、過剰な抑揚は控えめだけど、心に触れる何かがある。
何度聴いても飽きないんです。
「新聞は毎日パパの顔曇らせた」
「夕暮れ時の駅前の豆腐屋のおじさん」
自分の懐かしい記憶を思い出させる歌詞。
そして特に鷲掴みにされたところは
「すべては始まり 終わる頃には 気付いてよ 気付いたら 産まれた場所から 歩き出せ 歩き出せ」
のくだり。
このサビの部分の岸田さんの声を聞くと、なぜか胸が締め付けられ、何か込み上げてくるものがあります。
改めて、この楽曲も含め くるり岸田繁というアーティストのすごさに思い知らされました。
もし岸田さんが、番組出演後にこの曲を書いていたら、また別の感じの曲になっていたかもしれないですね。
もう一つこの曲で気になるところがあります。
この曲のイントロ部分のストリングスなんですが、UKロック好きなら、あれ?どっかで聴いたことがあるなー、と思う人もいるはず。
もちろん僕も思いました。
そう、Oasis 「What ever」
これ、完全にパクリなのでは?そう思い、調べてみたら面白い記事を見つけました。
1st「Defenitily Maybe」を初めて聴いた17歳頃、スウェードやストーン・ローゼズのようなバンドだなぁと思ったと同時に、それらのバンドよりも、ギターのコード感(コード進行と言うよりは)に、例えようのない特徴があるなぁと思った。それが第一印象。聴けば聴くほど好きになるアルバムだった。当然、2nd「(What’s The Story)morningglory]を聴く。その頃には私もバンドでソングライティングをやっていたはずだ。前作の「Live Forever」なんかで聴こえてきた不思議なコード感と共に、シンフォニックとも言える轟音のギターの中を泳ぐメロディー。とてもとてもダイナミック。私のOASIS贔屓は、ここから始まったのかも知れない。勿論、最高の作品だったラスト・アルバム「Dig Out Your Soul」まで全て網羅したんだけれども。誰も語っていないOASIS論。「轟音ギター」とか「大仰なサウンド」とか揶揄されることもある彼らだけれども、最初の最初から、彼らの音楽はベートーベンやマーラーの様な、シンフォニーのようだった。「ギターは小さなオーケストラ」とはジミー・ペイジの言葉だけれども、ノエル・ギャラガーはローコードの開放弦と深いリヴァーブを使って、ペイジよりシンプルかつ所謂スコティッシュ・トラッド的な(バート・ヤンシュやエリック・ドルフィーの影も見える)フォーク・ロック・スタイルのギターで、ニール・ヤングとは全く異なるオリジナリティを確立した。音楽的、器楽的にはシンプルだけれども、印象的にはベートーベンのような「歌えるシンフォニー」、つまり「本当の民衆の音楽」を初めて作り上げた、偉大なロックバンドだと思う。だから、ずっと聴き続けている。自分の中では、ベートーベンなんかと同じように、血肉となっている。
–––––岸田繁(くるり)
これはもはや、パクリというよりも、岸田さんのOasisへの尊敬の念でしかないと思います。
そして、インタビューの最後のくだりがとても印象的でした。
「ベートーベンのような「歌えるシンフォニー」、つまり「本当の民衆の音楽」を初めて作り上げた、偉大なロックバンドだと思う。だから、ずっと聴き続けている。自分の中では、ベートーベンなんかと同じように、血肉となっている」
血肉となっているかどうかはわかりませんが、サロンワーク中のBGMは主にこの音楽ブログで紹介してきたように、自分らが本当に良い、耳障りではない、心地よい、流行歌のルーツ、きっと100年後も聴ける音楽、をスピードラーニングのように流しています。
目と耳は直結している。
自分が歳をとったような言い方になってしまいますが、今の若いスタッフには、もっといろんな音楽、カルチャーに触れて欲しい。
サロンのBGM、もちろんお客様のためにも有りますが、スタッフの耳を鍛えるため、でも有ります。
今回紹介した曲 『Remember me』、きっと100年後も飽きずに聴ける音楽だと僕は思っています。
明日からまた、目や耳で感じたことをヘアスタイルに、会話に、ファッションに、と活していきましょう。
Written by 西村 光太郎