HEARTS/Double Bside

HEARTS
Double

「晴れのち」

2016,10,19
贅沢な時間の使い方
「森の図書室」

—   秋の夜を心豊かに —

だんだんと日が暮れるのも早くなり、夜が一層長く感じる今日この頃。
せっかくの秋だもの、すこしだけいつもしないことをしてみようと思い立ち、行った先は渋谷にある「森の図書室」。2014年にクラウドファンディングで1700人以上のパトロンを集め作られた、夜遅くまでやっている図書室である。

雑居ビルの中にそっとあるこの図書室は入るのには少し勇気がいる。

鉄製のドアに「インターホンを押してお待ち下さい」の文字。

ドキドキしながらインターホンを押すと中から可愛らしい女性の店員さんがでてきた。
ドアを開けた向こうにはすぐに壁があり、さらにその先へ進むと、なんとも心地のいい暗さで、壁一面の本棚は上から下までびっしり本が並んでいる。

 

名前の通り、この「森の図書室」は本を借りて帰れる。

期間は二週間。
特にジャンル別で分けられているわけではない本棚から本を選ぶのはなかなか難しいけれど思わず心がウキウキワクワクした。

飲み物を頼むと本のタイトルが書かれたコースターを、くじ引きのように一枚選ばせてくれる。

裏には短い感想文。

 

刺激的な感想文だけどなんだか読みたくなった。

思い立っては来たものの、もともと活字が得意ではない私。
子供の頃に手にしたことがある記憶に沿って手にした本はミヒャエルエンデ作の「モモ」。
手にしたことがある記憶とは裏腹に内容はすこしも覚えていない児童書だ。

もう一度読み返してみようと手にとったこの本は、子供が読むには少し難しい内容で、時間泥棒にとある少女が立ち向かうお話。
大人になった今だからこそ他人にも読んで欲しい本だと思った。

気がつくとあっという間に閉店時間。
平日は夜12時、土日祝前日は午前2時まで開いている。久しぶりにゆっくりとゆったりとした時間を過ごせた。

ふと思い立って立ち寄った都会の真ん中で、少し贅沢をした気がした。
物事がゆっくり流れる秋の夜長に、そんな時間を過ごしてみるのはいかがだろう。

written by  肥沼未帆