2018,09,26
『出西窯』出西ブルーへ
出雲大社へのお参りに向かう人たちで賑わうJR出雲市駅から車で約10分。
周りは広々と田園風景が広がる一角に赤瓦の屋根と木の看板が見えてきます。
静かな自然と
静かな自然と
素朴で暖かい心
漂う空気の中に職人さんの魂が流れているような凄く素敵な場所
ここが島根県出雲市斐川町出西にある窯元、
「出西釜(しゅっさいがま)」です。
「出西釜(しゅっさいがま)」です。
開窯は戦後まもない昭和22年。
子どもの頃から親しい5人の青年が民藝の教えに導かれ、築かれた陶窯なのです。
美術館などでもときどき耳にする「民藝運動」とは…
もともと思想家である“柳宗悦”を中心に展開された活動で、「名も無き職人の手から生み出された日常の生活道具の中にこそ、美術品に負けない美しさがある」という民藝の教えを広く世の中に紹介していったのが柳宗悦でした。
「出西窯」もこの活動に共鳴し、実際にバーナード・リーチや濱田庄司、河井寛次郎といった「民藝運動」の中心的な陶工の方々から指導を受けたそうです。
「暮らしの道具として、喜んで使っていただける物を」という価値観を基盤にさまざまな試みや取捨選択を重ね、暮らしの道具として美しい陶器を製作し続けているのが「出西窯」なんですね 。
工房の入り口に向うと扉には「ご自由に見学してください」の札 。
出西窯は一般的な窯元と違い、完成までのさまざまな工程や陶器の焼成に使う登り窯なども見学することができるのです。
作業場では熟練の陶工さんと多くの若い陶工さんが黙々と土と向き合っていました。
器の種類ごとに専門の職人さんがいて、1人の職人さんが、その器の成形から焼成までを担当しているそうです。
そんな研ぎ澄まされたその空気に、思わず背筋がしゃんとなりますが、それは良い緊張感でもあり、集団としての連帯感を大切に陶器作りをしている雰囲気はとても魅力的でもありました。
ここでは原料となる粘土の精製から、窯焚きまでをすべて自前の工房で行うという徹底した陶器づくりがなされています。
さらに、土や釉薬、窯焚きに使用する薪まで地元、島根産のものを使うというこだわりまでも。
さらに工房の奥まで進むと、なんだかすごく激しい熱気が伝わってきます。
さらに工房の奥まで進むと、なんだかすごく激しい熱気が伝わってきます。
それは初めて目にする6連房の大きな登り窯の火入れをしている光景を偶然にも見ることができたのです。
出西窯はここで年3~4回ほど窯焚きが行われるそうで、運良くもその火入れの場面に遭遇することは地元の方でも珍しいようです。
1回の窯焚きは2日間にわたり、一昼夜、約1260度の炎を前に薪を投げ入れるハードな作業で、約5000個の陶器が焼き上がるそうです。
これがいかに巨大なものか想像がつくと思います。
陶工さん達が一番ワクワクして楽しいのは、「人間の力を超えた世界」やはり登り窯の窯出す瞬間とおっしゃっていました。
陶工さん達が一番ワクワクして楽しいのは、「人間の力を超えた世界」やはり登り窯の窯出す瞬間とおっしゃっていました。
工房の隣にあるのが、
展示販売館「くらしの陶・無自性館」
この無自性とは「何もかもおかげさまで自分の手柄などどこにもあろうはずがない」という意味で、職人さんたちが心のよりどころにしている言葉だそうです。
この販売所は明治初期の米蔵を改装して作られ、木の風合いを活かした内装と吹き抜けの館内は開放感抜群で気持ちいい空間が広がっていました。
明るい館内では、1000以上の器に出会うことができ工房直営なので、この時期、この場所でしか買えない器も並ぶそうです。
これも窯元めぐりの嬉しいところですね 。
何種類ものお皿や器、お茶碗とカップ、一輪挿し、壺、などなど沢山置かれています。
同じ窯から生まれたとは思えない独特の光沢と、様々な色彩と表情の器たち。
「出西窯」の器を実際に見てみると、装飾が少なくシンプルなものが多いことに気付くと思います。
これは日用品としての使い勝手の良さを、どこまでも大切にしているからだと言います。
どの商品も手にしっくりとおさまるよう、工夫して作られたものばかりで、陶器でありながら土地の風土から自然と湧き出てきたような柔らかさがあり、とても温かみのある感触でした。
これは柳フォルムとも呼ばれる、柳宗理ディレクション出西窯シリーズ。
温かみのある曲線で出西窯のぬくもりある優しい雰囲気にぴったりです。
そんな数ある「出西窯」の器のなかでも、瞬時に目を引くは“出西ブルー”と呼ばれる青色のお皿。
この鮮やかな青色は、“呉須(ごす)”という顔料を使ったもので、その瑠璃色のことを黄昏時の出西の空のようだと言うことで出西ブルーと言われているそうです。
これは実物でないとなかなか伝わらないのが勿体無いくらい本当に素敵で吸い込まれてしまうほど美しいフォルムと鮮やかなブルー。
これは実物でないとなかなか伝わらないのが勿体無いくらい本当に素敵で吸い込まれてしまうほど美しいフォルムと鮮やかなブルー。
そして季節にあったディスプレイもまた女子の心を擽るのです 。
迷いに迷って選んだ器とマグカップ。
時代とともに変化する生活スタイルに合わせつつも、シンプルで素朴ながら実用性の高い器。
それこそが毎日の暮らしを彩る“用の美”として時代や世代を越えて愛され続けていくのですね。
使うほどに味わいと愛着の増す日常使いのなかで映えるくらしの道具。
島根を訪れたときはもちろん、最近では日本各地で販売されるようになっている出西窯の器。
ぜひ出会ったときには手に取り吟味して、そのぬくもりを感じてお気に入りを食卓に迎えてみてくださいね。
written by kayoko kashiwa